開講の趣旨――公判を活性化するための公判前整理手続の技術を身につけよう!

 裁判員裁判対象事件では公判前整理手続が肥大化しています。裁判所は、裁判員抜きの非公開の手続のなかで、検察・弁護双方に出来るだけ詳細な「間接事実」を主張させ、ときには「認否」をさせて、「争点」を絞り込もうとします。公判で取り調べる証人の数を出来るだけ少なくしようします。来るべき公判を極限的なまでに「コンパクト」にしようとします。刑事裁判に不慣れな弁護士は、こうした裁判所のプレッシャーに負けて、せっせと書面を提出します。必要な証人の申請を控えてしまいます。

 「間接事実」とは情況証拠のことであり、当事者の交わす書面は「主張」と題されながら、その実質は法廷で証人や被告人が語る予定の供述にほかなりません。こうした書面がやりとりされる結果、裁判官は、公判が開始される前に、裁判員が選任されるまえに、事件についての心証を得てしまいます。公判審理は、裁判官にとってわずかに残されたパズルのピースを埋めるためだけの作業になってしまいます。後から参加した裁判員は、事件の全体像や背景事情などについて、直接証人の言葉を聞くことができず、検察官が用意した「統合捜査報告書」などの書類の朗読を聞くことしかできません。複数の証人による様々な角度からの証言を聞いて関連証拠をじっくり吟味する機会を持つこともできなくなります。裁判官と対等の事実認定者であるはずの裁判員は、裁判官の手の内でその指導にしたがって判断することを強いられることになります。こうして、刑事裁判に健全な社会常識を反映して公判中心主義・口頭主義を復活することを目指した裁判員裁判は形骸化の危機に瀕しています。

 他方、裁判員裁判非対象事件では、たとえ事実に争いがある事件でも裁判官は正式な公判前整理手続をやりたがらず、これをできるだけ避けようとします。裁判官はフォーマルな手続を嫌い連日開廷の集中審理をさけようとします。その結果、検察官が必要にして十分な証拠を開示するという保障もないままに、公判は昔のようにだらだらと続くことになります。

 生き生きとした公判を実現するためにはきちんとした公判前整理手続が必要不可欠です。われわれが連日開廷の集中審理のなかで依頼人のために法廷技術を発揮するためには、憲法と法の趣旨に則った公判前整理手続を行う技術と力量を身につける必要があります。そこで、当アカデミーは、公判前整理手続のノウハウを伝授するワークショップを開催することにしました。公判前整理手続の正しい理論と依頼人の利益のための効果的な実践を学ぶ1日ワークショップを企画しました。シミュレーション授業と講師のクリティークを通じて、皆さんに明日から実践できる公判前整理手続の技術を学んでいただきます。

日程

2014年10月17日(金)

10:00~10:30 講義「公判前整理手続1」
10:30~12:30 実技「第1回公判前整理手続期日」※1
12:30~13:30 昼食
13:30~15:00 準備(課題については当日指示します)
15:00~15:30 講義「公判前整理手続2」
15:30~17:30 実技「公判前整理手続期日」※2
17:30~18:30 講義「公判前整理手続3」+ラップアップ

※1 ここでいう第1回公判前整理手続期日とは、起訴後2週間程度で行われる打ち合わせを経て、検察官の証明予定事実記載書の提出及び証拠調べ請求がなされた直後の公判前整理手続期日のことです。
※2 ある程度期日を重ねた後の公判前整理手続期日をイメージしています。

場所

東京都千代田区神田佐久間町1-9 第7東ビル103号室

テキスト

2014年9月中旬を目処に発送します。

課題

1 検察官の証拠調べ請求を踏まえて、刑事訴訟法316条の15に基づく証拠開示請求書を、各自事前に提出していただきます。期限は2014年9月末日を予定しています。
2 上記以外で、第1回公判前整理手続期日に出頭するまでに、裁判所又は検察官に対し提出が必要だと考える書面があれば、各自事前に提出していただきます。期限は2014年9月末日を予定しています。

受講料

3万円(施設利用料、資料代含む)
※交通費等は各自でご負担ください。

応募方法

受講申込書

受講申込書に氏名・住所・電話番号・メールアドレス・所属を記入の上、下記連絡先まで適宜の方法でご応募ください。なお、定員は20名とさせていただき、定員に達し次第、応募を締め切ります。

お問い合わせ先

〒101-0025
東京都千代田区神田佐久間町2-7 第6東ビル901 高野隆法律事務所気付
TEL: 03-5825-6033 FAX: 03-5825-6034 E-mail: komatsu@takanolaw.jp
一般社団法人東京法廷技術アカデミー 事務局 小松圭介